masquerade0324のブログ

とある大学院生のメモ書き

米澤穂信「リカーシブル」

先日,米澤穂信さんの新刊「リカーシブル」を買いましたという記事を書きましたが,いまさっき読み終えました.

リカーシブル

リカーシブル

この町はどこかおかしい。父が失踪し、母の故郷に引越してきた姉ハルカと弟サトル。弟は急に予知能力を発揮し始め、姉は「タマナヒメ」なる伝説上の女が、この町に実在することを知る――。血の繋がらない姉と弟が、ほろ苦い家族の過去を乗り越えて田舎町のミステリーに迫る。著者2年ぶりとなる待望の長編登場。

もしかしたらここからはネタバレになるかもしれないので読んでないかたは注意が必要です.

引用の通り,ハルカとサトルの物語です.タマナヒメ,常井といったところがキーワードになります.分類としてはミステリになるのでしょうか.作風としては,同じ著者の「ボトルネック」に近いダークな雰囲気が漂っています.しかし,ミステリの要素もあります.

最初読んでいくうちは,タマナヒメの伝説とサトルの能力のせいでどうもオカルトくさいような感じがしていたのですが,してやられました.どこまでも現実的な物語でした.米澤穂信はミステリ作家なのだというのも改めて思い知らされましたね.勝手にボトルネックっぽいなと思ったのもしてやられた一つの要因だと思います.

この物語を読んでいく中で,リンカの立場がよくわからなかったのですが,最後まで読めば確かにと思わされることばかりでした.ヒントはいくらでも散らばっていたわけです.

この手のある集落や伝承に関する話というのは,米澤穂信の他の話でもあったように記憶しています.そういう話がうまいのかなと思います.なかなかそこにもともと住んでいる人の心情描写をするのは容易ではなさそうです.こういった細かい描写がとても好きです.米澤穂信作品の特徴でもあります.古典部シリーズや小市民シリーズでもそうですね.

ボトルネックと根本的に違うところは,救いがあった,先があった,未来があった,というところに尽きると思います.ハルカとサトルはこの物語の後も辛いことはあってもとにかく生きていくのだと,最後の描写からは想像がつきます.それに対してボトルネックは絶望しかなかった記憶があります.それがボトルネックの良さなのですが.救いがないことが.

久しぶりの長編「リカーシブル」,おもしろく読まさせて頂きました.次の作品に期待です(古典部シリーズと小市民シリーズの新刊も出るとうれしいですね).